本科研プロジェクトは、情報通信技術(ICT)を活用した混合研究法教育の新たなプラットフォーム構築を目的とします。前フェーズで開発した混合研究法のeラーニングにICTと対話型生成AIの機能を加えた新たな教育プラットフォームを構築することで、研究の応用力と柔軟性を育む双方向的な学習環境の提供を目指します。
混合研究法は、複雑な現象を扱う看護研究をはじめとするヘルスリサーチにおいて世界的に注目され、活用が奨励されています。その要請に応えるべく、私たちは前プロジェクト「看護研究における混合研究法教育用ガイドブックの開発とeラーニングの構築」(20H03966)で、看護学研究者を対象とした自己学修型のeラーニング教材を開発・公開しました。これにより理論的知識の体系的な修得が可能となった一方で、研究目的に応じたデザインの構築やデータ分析ツール活用等の実践的な支援が不足しているという新たな課題が浮き彫りになりました。
近年、教育のDX推進に伴い、生成AIやラーニングアナリティクスを活用した個別適応的な学修支援が注目されています。しかし、混合研究法の教育においてこれらの先進技術をどう効果的・倫理的に実装するかという研究は、国内外を問わず未開拓の領域です。
以上を踏まえ、本プロジェクトではこれまでの成果を発展させ、従来の知識伝達型教育を超える双方向的で柔軟な学修支援を実現し、次世代の混合研究法教育モデルを確立することを目指します。
本プロジェクトは、主に3つのタスクを並行・連動して進めます。
第1段階(2026〜2028年度)では、既存のeラーニングコンテンツを看護系大学院の授業で活用し、ラーニングアナリティクスによる評価・改善を行います。同時に、混合研究法の理解を支援する生成AIシステムの開発と、量的・質的データ分析を行う統計ソフトや質的分析ソフトの混合研究法での活用を学べる教材開発を目指します。
第2段階(2029年度)では、これら3つの成果を統合し、日英バイリンガル対応の包括的な教育プラットフォームを構築するとともに、AIの倫理的活用ガイドラインを策定します。最終段階(2030年度)には、完成したプラットフォームを公開し、国内外の看護研究者による評価を実施することで、成果の国際的な波及を目指します。
本科研プロジェクトでは、混合研究法に高い関心を寄せる看護研究者のニーズに応答するために、混合型研究の計画・実施を導くガイドブックを開発し、これをもとにeラーニングシステムを構築・評価します。
最終的には完成したeラーニングシステムをネット公開することで、混合研究法を用いる看護研究者を支援することを目指します。
混合研究法は近年特に看護研究者の間で高い関心を集めています。2015年に発足した日本混合研究法学会においても、会員の40%は看護研究者(看護系大学院生を含む)であり、ここからも看護領域における混合研究法の学習ニーズの高さが伺えます。
混合研究法の学習リソースは、英語による書籍やオンデマンド動画教材など、ここ30年で急速に増加しています。日本語によるリソースは英語に比べその数は圧倒的に少ないものの、翻訳本や日本の研究者によるオリジナルの書籍の数が徐々に増えつつあります。一方で、混合研究法の教授法や学習方法に焦点を当てた理論的研究や実証研究の論文数は日本語・英語の別に関わらず極めて限定的であり、混合研究法の効果的な学習方法の開発やその効果検証についての議論は、その他のトピック(例えば、混合研究法の定義、哲学的視座、デザイン、統合、評価方法)と比較すると、先行研究において大きく欠落している点であるといえます。
以上を踏まえ、本研究プロジェクトは、混合研究法の効果的な学習方法を検討し、具体的な教育ツールを開発することを目指します。私たちのプロジェクトの成果が、看護研究実践の向上に寄与するものとなれば幸甚です。
プロジェクトの第1段階(2020年度-2022年度)では、最初のステップとして混合研究法の教授法・学習方法に関する文献レビューを実施します。次に、混合研究法を学習あるいは活用している看護研究者が日頃感じている困難について質問紙調査とフォーカスグループインタビューを通して明らかにします。その上で、これらの困難に対する助言をデルファイ法により主に海外の専門家より収集し、看護研究者が混合研究法を実践する上での課題とその解決のあり方を模索します。このように、ノビスとエクスパートの双方の視点を結びつけることによって、混合型研究実施における「ハードル」を看護研究者が乗り越えるための解決策を明らかにすることを目指します。
第2段階(2023年度-2024年度)では、支援ツールの開発と評価を実施します。具体的には第1段階で得た知見をもとに、混合型研究ガイドブックを開発し、これをeラーニングの構築およびその評価に繋げることを目指します。